サンビオティック体験記

ミニトマトの青枯病 困ったときの「菌力アップ」!

ミニトマトの青枯病発生!脅威の病害

農業普及員の方の中には、「困ったときの神頼み」ではなく「困ったときの菌力頼み」!と、菌力アップを武器に農業普及をしている方がいらっしゃいます。

農業普及員をしているSさんもその一人です。昨年、管内のTさんの圃場で、非常に困った事態に直面しました。
それは、ミニトマトの青枯病です。

sioreIMG_3587.JPG

Sさんは、すぐに連絡してきました。
「ちょっと見てもらいたい圃場があるんですよ。来てもらえませんか?」

Sさんの声は、軽い感じでそれほど深刻な印象はありませんでした。しかし、困っているというので、場所を聞いて早速お伺いしたのは、Tさんの圃場です。

圃場に入ると、すぐに気づきました。生長点の萎れがあるのです。「あれ、これネコブセンチュウですか?」

ネコブセンチュウなら、菌力アップの得意分野ですから、思わずそのように聞くと、生産者のTさんが首をかしげます。「どうも、違うごたるとですよ。」

ちょうど私と同じタイミングで、県振興局の担当の方にも来てもらっていました。振興局の方が、その場でビーカーテストをしてみると、白濁した液が出ます。(青枯病になった茎などを、水を入れたビーカーに差し込むと、白く濁った細菌液が出てきます。)

「ああ〜、これは、青枯病みたいですね。すぐ、切り捨てたほうがいいですよ!青枯病は移りますから、そのまましてたら、もっとひどくなりますよ。」(その後、病理試験で青枯病菌が確認されました。)

これは、本当に深刻な事態です。緊急事態と言っていいでしょう。なにしろ、生長点の萎れが見られる株が、圃場の1/3ほどもあるのです。もう3割は、青枯病で枯れる運命と思われます。これには、生産者のHさんも、がっくりと肩を落としています。

「たしかに、今年は、土壌消毒ばせんやったとですよ。大丈夫やろうって思うたとですけどね〜。。。」

ミニトマトの青枯病に緊急対策

意気消沈するTさんに、普及員のSさんは声を掛けます。

「Tさん、こんだけの株ば切り落としたら、ものすごか損ですよ。菌力アップば試してみてから、それでダメやったら、切り落とすごとしたらどがんですか?

なるほど、Sさんは初めからそのつもりで、私を呼んでいたんですね。用意周到とはこのことです。半信半疑のTさんも、うわさに聞いている菌力アップなら可能性はあるかもしれないと、一縷の望みをもっていました。
もうそれしか方法はないと、菌力アップを試してみることになりました。

青枯病が回復した驚きの現象

再度お伺いしたのは、その9日後です。すでに、菌力アップを4回実施しているところです。青枯病が進行していたら、すでに株は枯れて広がっているはずです。

ところが、圃場に入って驚きました。どこを見ても、ミニトマトが生き生きと生育していたのです!!

「あれ?青枯病は??」思わず声が出てしまいました。奥のほうにいたHさんは、ニコニコしてやってきました。

「ああ、菌力アップは大したもんですね。あれから、青枯病はひどくなるどころか、回復してしもうたですよ。どがんしようか(どうしようか)って思ったけど、ほんと助かりましたよ!収量も落ちとらんですから、すごかですよ。」

これには、普及員のSさんも大喜びです。

「やっぱり、困ったときの菌力アップですね!最初から、こうなると思ってましたよ。はははは!」

「いえいえ、これは初期症状だったから、耐病性が高まって、これで済んだと思いますよ。確かに、菌力アップやってなかったらひどくはなってたかもしれんですけどね。」

「でも、今度は病気が出る前にやってくださいね。土壌消毒後から、継続してやれば、全然違いますから!」と私から説明しました。

いずれにしても、危機的状況の青枯病圃場の進行が止まり、そして、その後は春まで何も問題なく収穫できたというのは、大変嬉しいことでした。皆様も、困ったときの菌力アップ!ではなく、困る前に日ごろから、ぜひやってくださいね。

(左の写真と右の写真は同じ株です。通常なら枯れていく青枯病の症状を発症していた株が、なんと見事に生育を続けています!)

※本事例では、菌力アップ10L/10a(100倍希釈)の潅水を4回実施しました。
※本事例では、まだ先端の萎れが見えるか見えないかのかなり程度の軽い状況でしたので、回復しましたが、病原菌がトマトの株の内部に侵入し、導管で増殖している場合は、回復の見込みはありません。その場合は、地上部で切り捨て、枯らせる方法で処置したほうが良いと思います。

追記:青枯病の原因と対策を再チェック

青枯病は、トマトなどのナス科では、非常に困った病気ですね。

青枯病に困っている方は、根本的には、下記管理が重要ですので、再度圃場のチェックをお願いします。

  • しっかりした土壌消毒が出来ているか?(もちろん、太陽熱消毒を含む)
  • 水はけのよい物理的整備(明渠、暗渠など)と土壌団粒化ができているか?
  • 未熟有機物を畑に入れない(または、残さない)ようにしているか?(酸っぱい匂いのするものや、アンモニア臭のひどいものを入れていませんか?)
  • 土壌pHの適切な管理
  • 抵抗性品種(台木)の活用
  • 菌力アップの継続的施用(土壌消毒後の菌力アップ施用と、定植後2ヵ月間の菌力アップの施用)
  • 元肥の窒素削減と、生育中のアミノ酸態窒素(糖力アップ)の活用
  • カルシウム欠の防止(過度な乾燥、窒素過剰、カリ過剰、マグネシウム過剰、リン酸過剰、カルシウム不足、高EC)
  • 根鉢を崩さない丁寧な植え付け作業。肥料やけ、中耕、過度な乾燥、過湿を避け、根が傷まないようにする。(根の損傷部分から青枯病原菌が侵入します。)

青枯病発生時の応急的対応のご提案

はじめに、以下の工程を行ってください。
これは、土壌の微生物相(微生物叢)を急速に改善し、カルシウムの補給と細胞の強化、発根促進を働かせるためのプログラムです。

品名使用量
(10a当たり)
使用回数使用方法
菌力アップ10L3日おき2週間
(計4回)
1〜2tの水で
希釈して潅水
本気Ca(マジカル)2L
海王(うみおう)200g

その後、以下の工程を行うことで、改善した土壌微生物相を維持しながらアミノ酸を供給し、トマトの健全な生長を再度促していきます。

品名使用量
(10a当たり)
使用回数使用方法
菌力アップ5L7日おきに
収穫終了まで
継続して実施
1〜2tの水で
希釈して潅水
糖力アップ5L
本気Ca(マジカル)2L

なお、罹病株は、早めに地上部で切除して圃場外に持ち出してください。(使用後のハサミなどは、必ず殺菌すること。)